【結果】第65期名人位・第63期クイーン位決定戦

2019/01/05(土)に滋賀県大津市近江神宮にて競技かるたの最高峰の一戦である「名人戦」と「クイーン戦」が行われました。

少し日数が空いてしまいましたが、結果を簡単に紹介します。

 

出場選手

(↑左から川崎名人、粂原八段、山下クイーン、森田六段)

 

名人:川崎文義 

所  属:福井渚会 段  位:八段 かるた歴:24年 生年月日:1988年 30歳 住  所:福井県越前市在住(福井県出身) 職  業:会社員 好きな札:特になし

 

名人戦挑戦者:粂原 圭太郎

所  属:京都大学かるた会 段  位:八段 かるた歴:16年 生年月日:1991年 27歳 住  所:京都府京都市在住(群馬県出身) 職  業:塾経営、会社役員、作家 好きな札:「たきのおとは」

 

クイーン:山下 恵令

所  属:東京明静会 段  位:六段 かるた歴:27年 生年月日:1985年 33歳 住  所:東京都江戸川区在住(東京都出身) 職  業:会社員 好きな札:「これやこの」

 

クイーン戦挑戦者:森田 真央

所  属:杉並かるた会 段  位:六段 かるた歴:16年 生年月日:1994年 24歳 住  所:東京都在住(東京都出身) 職  業:教員 好きな札:「あいみての」

 

一回戦

今回も放送はニコニコ動画の生放送(ニコ生)にて配信されました。1回戦はクイーン戦メインで放送されました。解説は前名人の岸田愉さん。

 

↑暗記時間の様子。暗記時間中に後ろのパネル札を並べるんですね。暗記時間の最中でも札が移動される可能性があるので、暗記時間の後半に並べるのが効率的なのでしょうが、選手たちが気にならないのか少し心配でした。1回戦は試合前に取材用の撮影などもあるので、かなり独特な雰囲気だと思います。

 

↑クイーン戦の一回戦という緊張感のある場所ですが、意外にも先手を取ったのはクイーン戦本戦は初出場となる挑戦者の森田六段。序盤から素晴らしい速さで取り主導権を握ります。

 

↑しかし森田六段のお手つきなどで、徐々にクイーンの流れになります。森田挑戦者も集中を切らさず、13-13セイムまで追いつくも再びクイーンが突き放し、62枚詠まれた時点で8-11とクイーンがリード。さらに挑戦者のお手つきもあり6-11と差が広がります。

 

↑このままクイーンが勝ちきるかと思われましたが、森田六段は集中を切らすことなく取り続け、4-4のセイムに。さらに連続で相手陣右下段を連続で抜き一気に4-2と逆転。

 

↑クイーンが意地を見せ怒涛の3連取。1-2と再度逆転に成功。挑戦者は自陣の2枚を右下段に固めます。

 

↑お互い自陣の札を守ると思われましたが、挑戦者が相手陣の「わ(たのはら)」を抜き、一回戦からまさかの運命戦に。クイーンは「こ(れ)」挑戦者は「た(ま)」を持っていましたが、詠まれたのは「たま」。挑戦者がきっちり守り勝利。

 

名人戦は中盤までほぼ互角の展開でしたが、55枚が詠まれたあたりから粂原八段が一気に取りを重ね、9枚リード。その後名人が3枚差まで挽回したものの、名人のダブもあり8枚差でこちらも挑戦者の粂原八段が勝利しました。

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二回戦

二回戦は名人戦メインです。二回戦の解説は西郷直樹永世名人。名人位を14期も務めたレジェンドです。

 

名人戦は川崎名人(左)に粂原八段が挑戦します。川崎名人はスピードのある攻めを武器とした王道のかるた。対する挑戦者は独自の理論に基づく個性派のかるたです。挑戦者の手元にあるのは箱ティッシュですが、粂原八段は普段の大会でも箱ティッシュを持参しています。

 

↑序盤は両者ほぼ互角の展開でしたが、持ち札が20枚を切ったあたりから徐々に名人のペースに。17-21から三連取し、一気に14-21の7枚差とします。

 

↑右上段に札を多く置く独特な配置で、挑戦者が粘り13-17の4枚差まで詰めます。

 

↑しかしその右上段も川崎名人に攻略され、さらに他の場所の札でも名人が優勢になり一気にリードが広がり2-13となります。

 

↑最後は挑戦者の右上段と左下段に分かれていた「か(く)」と「か(さ)」を名人が素晴らしい渡り手で2枚とも払い、二回戦は11枚差で名人が勝利した。

 

クイーン戦は序盤から挑戦者の森田六段が主導権を握り、常に3〜4枚のリードをキープした展開。中盤に入ってもその集中は途切れることなく、15-9の6枚差まで差が広がります。そのままの勢いで押し切った挑戦者が10枚差で勝利。クイーン戦は一、二回戦と挑戦者が連勝。クイーンは防衛に向けて後が無い苦しい展開となった。

 

三回戦

三回戦はクイーン戦メインです。

↑三回戦、山下クイーンが上段に14枚も置く珍しい配置。一、二回戦の経験を踏まえた変更なのかもしれません。(単に上段定位置の札が多かったのかもしれませんが)

 

↑この試合は前半から両選手とも素晴らしい動き。三回戦になるとお互い身体がよく動いています。三試合目も一、二試合目と同様に挑戦者の森田六段が優勢に進め15-12とリードします。

 

↑クイーンも上段の札をうまく取り差を縮め、11-11セイムとなりますが、その後再び挑戦者が巻きかえし、78枚が詠まれた時点で6-3と挑戦者リード。クイーン位獲得にあと3枚と迫る。

 

↑しかし、そこから怒涛の5連取で1-6とクイーンが逆転。挑戦者が自陣を一枚守るものの、最後は「ゆう」をお手つきしてしまい3枚差でクイーンの勝利。

 

名人戦は終盤までわからない展開。場の残り札が残り10枚の時点で5-5セイム。しかし、そこから粂原八段が自信を持っている終盤戦で一気に畳み掛け最後は4枚差で勝利。

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四回戦

四回戦は名人戦メインです。

 

↑名人防衛に後がなくなった川崎名人が序盤から鋭い攻めを見せていきます。

 

↑挑戦者がこぬで「この」を触ってしまうお手つきなどもあり、5-12と名人が7枚リード。完全に名人の流れとなります。

 

↑しかし挑戦者も独自の終盤戦術で札を減らしていき、さらに名人が「はるの」で自陣左下段をお手つき。気がつけば2-3の1枚差となります。ここで、挑戦者が自陣上段の3枚を囲いながら名人左下段の「す」を抜く素晴らしいプレー。なんと2-2となり、どちらが勝つか全くわからない展開となります。(解説の西郷永世名人は「す」は左に置くべきだったとコメントしています)

 

↑2-2の緊張感のある局面。最後は挑戦者が自陣上段をお手つきし、名人が自陣右の「たれ」を戻り手できっちり取り2枚差で勝利。(セミダブ)名人戦は最終五戦目に持ち越された。

 

一方のクイーン戦は今までの三試合とは異なり、山下クイーンが序盤からリードする展開。そのまま流れを譲らず16枚差での勝利。こちらも両者2勝2敗となり、5試合目に突入することとなる。

 

五回戦

五回戦も名人戦がメインです。

 

↑勝ったほうが次期名人となる五回戦。序盤はやや名人優勢でしたが、19-19セイム以降流れは挑戦者の粂原八段へ。

 

↑ふわっとした軽い取りと、思い切りの良いスピード感ある取りを巧みに使い分け挑戦者が取りを重ねていく。気がつけば14-2と挑戦者が大きくリード。

 

↑最後は「はなの」を抜いて挑戦者が11枚差で勝利。初の名人位獲得を果たした。

 

 

↑一方のクイーン戦は序盤から山下クイーンのペースで試合が進み、最後は8枚差でクイーンが勝利。初の防衛を決めた。

 

 

まとめ

クイーン戦は今までは3回戦制でしたが、今年度から5回戦制となり、初回からまさかのフルセットでした。序盤は完全に挑戦者のペースだったので、これは新クイーン誕生かと思いましたが、3回戦で微妙な試合を勝利したことでクイーンの流れになり、それ以降は本来のプレーを取り戻したという感じでした。

名人戦も一進一退の中フルセットの勝負となりました。名人戦は前年度と同じ対戦となりましたが、挑戦者が二度目ということで前回以上に良い取りを重ね、落ち着いているのが印象的でした。緻密な駆け引きの中での高いレベルの試合だったと思います。